【ドイツ親子留学】日本の受験制度と子育てについて

 

今回もベルリンにて親子留学をされている

お母様から記事を寄稿していただきました。

お母様は日本の受験制度を受験道と書かれているのが

面白いと思いました。

まだまだ日本の枠を外れることに対して

多くの方が怖さを持っている中で、

決断をされた勇気は素晴らしいことだと思います・・・

どうぞお読みになってくださいね!

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教育について本格的に学んだこともなく

何かを語れる立場ではないのですが、

子育て中の母親として15年間考えてきたことを

書かせていただきたいと思っております。

 

日本の受験制度はこれでいいの?

 

学校教育ということに関して申しますと、

私自身は学校の宿題や試験の類が苦手な方ではなかったと思います。

ですが、それでも高校時代の3年間、

受験勉強のために睡眠時間がどんどん削られていったストレスは、

30年近く経った今でもはっきり思い出すことができます。

 

出産直後、子供の顔を見て最初に思ったことは

「この子も大きくなって

受験などしなければならないのか、可哀想に。」ということでした。

でも、「私がこの子に受験をさせなければ、

しなくていいのでは?」という考えがふわ~っと舞い降りてきて、

それが私たちの旅の最初の一歩でした。

 

私が受験を好きでない理由は、

その努力に対するリターンがあまりに小さく思われる…

ということに尽きます。

就職氷河期だったこともあり、

大学の同窓生の多くが進路未定で卒業していったからです。

そもそも就職活動のときに問われる中心的な質問は

「あなたは、どのようにわが社に貢献できますか?

他の人との違いをPRしてください。」ということですが、

受験道にまい進すればするほど

他の人との違いなどない生活を送ることになり、

これに答えることは至難の業となります。

この質問にうまく切り返すことのできる

大喜利の得意な子は就職が決まり、

その他の子は公務員浪人、資格試験浪人の道へ行ったように思います。

そのため、わが子を受験道にまい進させようなどという気持ちは

まったく起きなかったのでした。

 

子育て中の私の友人も似たような考えを持っています。

小池百合子都知事の就任が話題になったころ、

彼女は都知事がカイロ大学を出てアラビア語が

堪能でいらっしゃることについて

「これくらい人と違う経歴があると

採用面接のPRに困らないと思うから、この方向を目指したい。

大きくなったらエジプトに行かせたい。」と言っていました。

日本の受験道に散々まい進したはずの

同窓生のこの言葉に、私はとても勇気づけられました。

 

日本の受験制度は子どもの感性を奪う!?

 

日本で子育てするにあたり

受験道を放棄することはある意味で

枠から外れることを意味します。

ですが枠から外れることを決意すると、

親子ともども楽になります。競争しなくてよくなるからです。

競争をやめると時間ができます。

絵を描いたりお料理したり自然と戯れたり、

楽しいことをする時間がたくさんできます。

 

そもそも、多くの子が受験道にまい進する

10代の時間というのは、

大人の時間とは違う貴重な歳月です。

たとえば宮大工になるには

若いうちに修業を開始しなければならず、

高校卒業後では完全に手遅れだと聞きます。

五感が瑞々しい若いうちでなければ、

木の湿度や歪みなどのわずかな違いを

見分けるようにはならないそうです。

ダイヤモンドの研磨技術者もこれと同じで、

10代前半の若いうちに始めなければ

一人前になることはできないと聞きます。

そのような感受性の繊細な多感な時期を、

受験のような競争ごとに

費やしてしまうのはもったいないような気がします。

 

日本の受験制度のコストとリターン

 

もちろん受験道にまい進することで

得られる学歴もあると思いますし、

親子ともそれに満足できるのであればそれでもよいとは思います。

ですが、たとえば私の母校は旧帝国大学のはしくれですが、

ベルリンではもちろん誰一人知る人はありません。

同窓生でドイツで活躍している方はFacebookなどに

その後に出た欧州と米国の大学・大学院の名前だけを書かれていて、

日本の母校の学歴は記載しておられません。

日本の大学は

国際的な知名度はないことがほとんどですので、

そこに向かう努力というコストとリターンが

本当に見合っているかどうかについては、

落ち着いて判断していく必要があるように思います。

 

また日本の学校もよいところはたくさんあると思うのですが、

海外と比べて競争を煽られる環境にはあると思います。

ですから親子で熱くなってしまう前に、

それが実際どの程度役に立つのか、

他の選択肢はないのか、

落ち着いて考えてみることも大切だと思います。

一度枠外に出てみると気がつくことも

たくさんあると思いますので、

1~2年インターに通わせたり、

親子で海外に出てみるというのも

選択肢の一つではないかと思っております。

(W.Mihara)